【日銀ETF売却の深層】なぜ今?異例政策の背景と円高・国益への影響

2025年9月、日本銀行が保有するETF(上場投資信託)の売却を開始しました。これは単なる資産処分ではなく、金融政策の正常化財務健全化、そして円高誘導の布石とも言える重要な転換点です。

本記事では、他国が採用していない異例の政策がなぜ日本で導入されたのか、なぜこのタイミングなのか、そして売却が日本の国益や為替にどう影響するのかを徹底解説します。


🇯🇵 なぜ日本だけがETF買入れという異例政策を採用したのか?

日銀がETFを買い入れ始めたのは2010年、そして本格化したのは2013年の「異次元緩和」以降です。

他国との違い

国・地域 中央銀行の株式・ETF保有状況
日本 ETFを大量に保有(時価約76兆円)
米国(FRB) 一時的に社債ETFを保有(2020年)→すでに売却済み
スイス(SNB) 米国株を直接保有(ETFではない)
欧州(ECB) 株式・ETFは保有せず、国債中心

採用理由

  • 日本特有の長期デフレと低成長に対し、従来の金融政策では効果が限定的だった
  • 株式市場を通じた資産効果の創出(株高→消費増)を狙った
  • 政府と連携したアベノミクスの一環として、異例の政策が容認された

🕰 なぜこのタイミングで売却なのか?

ETF売却は「いつかはやらなければならない」政策ですが、なぜ2025年なのかには複数の要因があります。

売却開始の背景

  • 2024年に新規買入れを終了し、政策的役割が終わったと判断
  • 2025年7月に銀行株の売却を完了し、売却ノウハウを蓄積
  • インフレ率が2%前後で安定し、金融緩和の出口が見えてきた
  • 植田総裁の任期中に正常化の実績を残す意図

市場への配慮

  • 年間売却額は時価で約6,200億円と極めて緩やか
  • 景気後退時には売却停止も可能な柔軟な枠組み

💰 財務健全化は日本の国益になるのか?

日銀のETF保有は簿価で約37兆円、時価では約76兆円に達しており、含み益は約40兆円以上とも言われています。

財務健全化の意義

  • 株式は価格変動リスクが高く、暴落時に財務悪化の懸念
  • 含み益を国庫納付金として活用する可能性も議論されている
  • 将来的な財政赤字補填や年金財源への転用も視野に

国益との関係

  • 市場機能の回復 → 健全な価格形成と資本配分
  • 政策の自由度向上 → 次の危機対応余力の確保
  • 財務安定 → 円の信認向上と海外投資家の安心感

💱 円高との関係:日銀は円高を進めたいのか?

ETF売却は金融引き締め効果を持つため、理論的には円高要因となります。

円高との関係性

  • ETF売却 → 株価下落 → リスクオフ → 円買い圧力
  • 金利据え置きでも、利上げ観測が強まれば円高要因
  • 植田総裁は「通商政策の影響に留意」と発言し、為替安定を重視

為替政策との連動

ETF売却は直接的な為替政策ではないが、円の信認回復と資本流入促進には寄与する可能性があります。


🧩 他の政策との関係:ETF売却は「正常化」の一部

日銀は現在、以下のような金融政策の正常化ステップを進めています。

政策項目 状況
マイナス金利 段階的解除が議論中
国債買入れ 減額・縮小方向へ
ETF・J-REIT 売却開始(2025年9月)
金融機関株 売却完了(2025年7月)

ETF売却はこの中でも象徴的なステップであり、**中央銀行のバランスシート縮小(QT)**の一環です。


📚 参考文献・データ出典