本当に派遣社員はやめるべきか:実際に派遣社員を経験して分かった事
就職活動や転職活動の時に、派遣社員としての生活を考える事がある。意外に条件が良く、自宅からも近い。未経験の仕事にもチャレンジできるし、比較的辞めやすい。置かれている環境を考えると、派遣社員が最適解のように思える事もあるだろう。
ただし、こういう声を聞いたこともある。派遣社員はやめとけ―。ここでは、本当に派遣社員はやめるべきなのか、技術派遣の会社で働いた経験のある身として考えてみたい。
派遣はやめるべきと言われる理由
なぜ派遣はやめるべきと言われるのか。例えば、次のような理由が考えられる。
- 派遣社員は収入が低い
- 仕事が単調で成長しない
- 安定しない
- 異性にモテない
1. 派遣社員は収入が低い
派遣社員は低収入なイメージがある。実際はどうだろうか?
厚生労働省の労働者派遣事業報告書やIndeedの記事を参照すると、一般派遣社員の平均年収は約380万円。正社員の平均年収は約500万円で、確かに、年間約120万円ほど低い結果となった。
一方で、技術派遣の場合は少し様相が異なる。この場合、年収は500万円~600万円が相場となる。技術派遣は派遣会社の正社員なので、ボーナスや退職金も勿論ある。派遣だからと言って、必ずしも給料が低いとは限らないようだ。
2. 仕事が単調で成長しない
派遣社員の仕事は単調と言える。例えば、単純な梱包作業、倉庫整理、経理のデータ入力、製品評価。技術派遣では、機構設計、シュミレーション、など専門的な仕事をする事もあるが、やはり仕事はルーチンワークとなる。
派遣社員の仕事は与えられるものである。与えるからには、何をやるか、いつまでにやるかもはっきりしている。むしろ、これらが明らかでないと、今日突然来た派遣社員は何も仕事を出来ないだろう。
新規プロジェクトの企画など、所謂「仕事を作る仕事」は、企業の正社員が担う。
技術が身に付きにくい
技術派遣の仕事は、驚くほど細分化されている。例えば設計だと、CADモデルの手直し、図面の手直し、回路の手直し、簡単な計算、などなど。派遣社員は、あくまでも設計の一部分を担当している。
なお、これらはメーカー正社員であれば1年か2年で一通り経験出来る。派遣社員では身に付くのは限定的なスキル、設計能力などの主要スキルは身に付かない、と考えた方が良い。
技術派遣社員の成果とは
ちなみに、技術派遣の成果とは何だろうか?新しい機構を思い付き、派遣先企業に提案した。派遣先の業務効率化を行い、コストダウンした。これらは素晴らしい結果と言えるが、派遣会社からすると意味を持たない。
筆者がいた技術派遣の場合、成果=残業だった。業務効率化など、もってのほかである。
例えば定時ですぐ帰る残業ゼロの人よりも、残業30時間やっている人の方が派遣会社は有難い。派遣社員は単価が決まっているので、残業が多い=売り上げが多くなる訳である。
3. 安定しない
技術派遣の場合、契約期間は3か月から6か月を指定されやすい。例え何十年と同じ派遣先で働いていても、である。派遣先がその気になれば、3か月後に切る事が出来てしまう。
派遣先がその気になるのは、業績悪化、不景気、などが原因だろうか。何十年もハードに働いた人が、派遣先の業績悪化で簡単に切られたのを知っている。
職場を選べない
また、技術系の派遣社員は働く場所を選べない。例えば沢山ある派遣先の中から、最も自宅に近い所を選ぼうと営業に打診しても、却下される。技術系派遣社員は、最も高く売れる派遣先に行くことになり、自宅から2時間掛けて職場に向かうケースもよくある。
年齢と安定
派遣社員は年齢に気を付けた方がいい。年齢が高くなると、派遣先が無くなり、転職を余儀なくされるケースがある。
技術派遣では、技術のある40歳よりも、無知な23歳の方が好まれる事もある。これは、若手社員が派遣社員に指示を出す、という構造のためである。歳上よりも歳下の方が遠慮なく指示が出せる。
歳を取ってくると契約更新出来ないのは、この辺りも関係していると思われる。
4. 異性にモテない
あくまでも筆者の周りの話となるが、技術派遣だからと言って、特段モテないという事は無かった。彼女がいる人、結婚している人も多くいた。この辺りは職業形態と言うよりも、個々の外見や性格の方が強く影響すると思われる。
ただし、勿論、異性側が悪いイメージで見ることはある。例えば派遣切りに代表される雇用の不安定さや、収入が低いというイメージ。知り合った後にNoを突き付けられる事もあるだろう。事実と違ったとしても、これらのイメージは付きまとうため、その点は不利かもしれない。
派遣社員のメリット
なお、派遣社員にも勿論メリットがある。例えば下記がある。
- 社内会議が無い
- 出張が無い
- 仕事の範囲が明確であり、それ以上の事は求められない
- サービス残業がゼロ
就いている仕事にもよると思うが、技術派遣の方が正社員よりも仕事には集中できる。正社員だと、社内調整や会議で時間を奪われ、ストレスを感じることも多いだろう。また、サービス残業も未だにある。これらの要素は派遣社員には無い。
派遣社員が向いている人
どういう人が、派遣社員に向いているだろうか。性格的な部分はさておき、生活で考えた場合、例え明日切られたとしても大勢に影響がない人、が派遣社員に向いている。
仕事のストレスは少ないため、すでに資産がある人などは正社員よりも派遣社員の方が良いかもしれない。同様に、既婚者でいつ仕事を辞めてもいい人、留学までの間で期間限定で働きたい人、なども向いていると言える。
まとめ
派遣社員だけはやめとけ―。筆者は期間限定であれば、派遣社員もありだと考える。
- 収入や未婚率で見ると、必ずしも派遣社員の方が劣っているとは言えない。ただし、将来の安定性まで考えると、やはり正社員に軍配が上がる。派遣社員には契約を打ち切られるリスクが常に存在し、更に年齢が上がるとその確率も上がる。新規の派遣先が決まらなければ、転職活動を余儀なくされるかもしれない。
- 転職を考えた場合、転職市場で通用するスキルを身に着けておく必要がある。ところが、派遣社員の仕事は細分化されており、例えば設計などでも全てを網羅して経験する事が難しい。スキルが身に付きにくいため、転職活動も苦戦するかもしれない。
これらを考慮すると、派遣社員になったとしても、期間を限定した方が良いと思われる。新卒でも転職でも、一先ずの避難先としての意識を持ち、他に良い転職先が見付かればすぐにそちらに移る。
派遣社員は仕事のストレスも少なく、心地よく感じる人も多いと思う。ただし、歳を取った時に突然契約を打ち切られる可能性を忘れてはいけない。